10年前、彼女のイニシャルを携帯メールアドレスに入れた結果wwww

LINEを削除してしまった

先日、手違いでLINEを削除してしまった。
それまでのトーク履歴だけならまだしも、友人たちのアカウントも全て消えてしまった。LINEが登場してからというもの、電話番号やメールアドレスの交換はしなくなっていたので、一切連絡が取れなくなった友人が大半だ。ただせさえ友人が少ないのに…。これからは仲良くなったら電話番号も交換しておこうと肝に銘じた。便利になった故の弊害がこんなところにあった。
とはいえ、LINEのお陰で異性にも気軽に連絡先を訊けるようになった。電話やメールだとややこしい、「ブロック」をいともカンタンにできるということで、警戒心が少ないのだろう。

今回は、そんなことを考えていたら思い出した、10年以上前の出来事を語らせてほしい。同世代のみなさんだから、懐かしい気持ちになってくれると思う。

当時のメールアドレス事情

当時のメールアドレス事情

朝、目を覚ますと枕に違和感があった。持ち上げて下を探ってみると、半円形の白い布があった。見方によってはブリーフだが、モノを通す窓がない。布は袋状で、半円の直線部分から開くようになっている。そこから手を入れてみると、布の大きさに見合わず、いろんなものがたくさん入っているのが分かった。おそるおそるその中の一つを取り出してみる。
テレレレッテレー。効果音と共に、竹とんぼの下に吸盤のようなものが付いた、黄色いものが出てきた。これってタケコプター? ということは、この布は四次元ポケット?
現実から目を背けたいとき、特に、失敗した何かをやり直したいとき、そんなことが起こらないかなと、割と本気で願ってしまう。

私が高校に入学した当時、iモードが始まったばかりで、ケータイがセンセーショナルを巻き起こしていた。バイト代を貯めて初めて買ったケータイは、画面は緑色、着信音は三和音の、今では子どものおもちゃにもならない代物だった。
メールの存在が一般的になったのもその頃。当時のメールアドレスのローカル部の初期設定は、ケータイの電話番号そのままだった。しばらくして、迷惑メールが問題になるまで、メールアドレスを変更する人はほとんどいなかったと思う。

当時、初めてできた彼女が言った。
「メアドにお互いのイニシャルを入れようよ!」
そんなのが流行っていた。現代でいうところの、フェイスブックの「交際中」表示や、ツイッターのプロフィールに「大切な人がいます」と書くようなものだ。同じくらいスベっている行為。そんな情報誰も知りたくないのに、示して何になるのだろう。

なんだかんだ、若気の至りと言うべきか、嫌々ながらも彼女の要望に応じた。私のメールアドレスは、私のイニシャルと誕生日、その後ろに彼女のイニシャルと誕生日。彼女のメールアドレスは、それをテレコにしたものにした。
この行為には大きなリスクが二つある。一つは、交際が破綻すると、必然にメールアドレスの変更をしなければならなくなり、破綻したことが周知になること。もう一つは、身を持って体験することになる。

突如現れた美女

突如現れた美女

バイト先に、とてつもなく好みの新人が入った。キレイ系で、Sっぽくて、彼女の勤務初日に一目惚れしてしまった。
客足が途切れたタイミングで世間話をしていると、彼女が一歳年上だと知った。

「俺の方が年下なんで、タメ口にして下さい」
「うーん、じゃあ西山さんは先輩なので、プラマイゼロでお互いタメ口にしませんか?」

その台詞、その言い方に、ますます興味を持ってしまった。年上のお姉さんに憧れる年頃だったからなおさらだ。

バイトが終わる三十分ほど前、引き継ぎのために片付けや掃除をしているときだった。

「話し足りないから、終わった後ファミレスでも行く?」

彼女の方から誘ってくれた。それまでの会話で、趣味嗜好や考え方が似ているなと感じていたのだが、彼女の方もそう思ってくれたのかもしれない。

バイト先の最寄りのファミレスで、軽く食事をしながら談笑した。ドリンクバーで選ぶものも似通っていて、

「気が合いそうだねー」

なんて言い合った。これは、イケるかもしれない…。デートをしている妄想や、Sっぽい彼女が上で私が下になっている妄想をした。モテない人生を歩んできたけど、会ったその日に、なんて展開もあるか? 来た、始まったぞ俺!

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

彼女のその声に我に返った。焦る必要はない、まだ初日だ。これからバイト先で週に何度も顔を合わす。とりあえずメールアドレスの交換でもしておくか。

「あのさ、メア……」

言い掛けたところで気づく。まずい、メールアドレスには交際中の彼女のイニシャルが入っている。交際中といっても、もう何ヶ月も連絡を取っておらず、正式に別れ話をしていないだけで、そのときにはとても彼女と呼べる間柄ではなかった。
でも、彼女にメールアドレスを見られたら勘違いされる。説明をしても、メールアドレスを変更していないから、引き摺っていると思われてしまうかもしれない。考え方が似ている彼女は、私と同じでスベっている行為が嫌いかもしれない。軽蔑されては終わりだ。
得策は、この後メールアドレスを変更し、後日バイト先で交換する。これならイケる、きっと上手くいく。

「ん?」
「いや、何でもない! また来よう」

メールアドレスを訊かなかった後悔

後悔

数日後、彼女との二度目の勤務日。意気軒昂にバイト先へ向かう。更衣室で制服に着替え、事務所に降りた。

「おはようございます!」

いつもよりオクターブ高かったかもしれない。それくらい興奮していた。彼女に会える、顔が見れる、また彼女が上になっている妄想をしてしまう

ところが、出勤五分前になっても彼女が来ない。分からないけど、漠然と、何か嫌な予感がした。
ほどなくして社員が私の元へ来た。

「西山くんごめん、今日一人で頼むわ。俺は裏にいるからピンチのときに呼んで」
「えっ? 新人さんは?」
「それが、一時間くらい前に、他のバイトが決まったから辞めるって電話してきて一方的に切られたんだよ。やられたよ」

なんてこった……このムラムラの、いや、ドキドキの行き場はどこに向ければいいんだ。もう彼女に会う術はない。あのとき、メールアドレスを交換していれば。あのとき、イニシャルを入れることを承諾しなければ

それを思い出すと、もしもボックスが欲しくなり、私は今でも時折枕の下を探る
気になった人にはためらわず連絡先を訊き、仲良くなったら電話番号とメールアドレスも訊いておこう。

西山 一(はじめ)

西山 一(はじめ)サラリーマン小説家

投稿者プロフィール

シェアブログに乗り込んできた新進気鋭の小説家。
独特のタッチと切り口でファンを魅了している。

実際に本人に起こった日常の出来事を小説タッチで表現する。
そのシュールさにハマる人が続出中。

最近、不動産投資デビュー。
今後は、多摩と埼玉の物件を買い進める予定。

30代。生まれも育ちも多摩。多摩を知り尽くした男。

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