ネットワークビジネスに誘われた話「第3話 引くほどの大勢で会う」

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「ニシヤマくん、◯月△日は空いてる?」

ミヤモトと2人で飲んだ1週間後くらいだったろうか。
またミヤモトから誘いのLINEがきた。
聞くと、新大久保で飲み会があるらしい。

「友達連れてきてもいいから、よろしくねー」

おお、なんだかリア充っぽい感じ。
ほど遠い俺からすると、知らない者同士が自分の知り合いを呼んで集まる、なんて経験はほぼなかった。
成人式のときですら、当時会話をしたことなかった同級生に声を掛けられただけで戸惑っていた。

そんな俺にとって、今回の飲み会はハードルが高い。
自信がなくて舞踏会に行く勇気を持てなかったシンデレラの気持ちが痛いほど分かる。
「お前なんかが行っても相手にされない」「行くな」と制している継母も俺自身で、まるで1人全役でシンデレラを演じているようだ。

ミヤモトに返事をする前に、友人のヤマノに相談をした。

「フジオカさんと一緒に九州会ってやつには行けたんでしょ? それなら平気じゃない?」

そう言われてみればそうだ。
行くまではあんなに大勢だとは知らなかったとはいえ、なんとかなったしたくさん会話もできた。
…よし、行ってみるか。
1人全役だと思っていたが、魔法使い役はヤマノだったみたいだ。
その日は予定があるとのことでヤマノは来れなかったが、それでも踏み出す勇気をもらえた。

新大久保駅で降りたのは初めてだった。
仕事が早く終わり、ミヤモトとの約束より1時間ほど早く着いてしまったため、駅近くのマクドナルドでコーヒーを飲んでいた。
駅で待ち合わせる予定だけど、他の人たちとは店で合流するのだろうか。
それとも何人かとは駅で合流するのだろうか。
仕事帰りのまま来たからスーツだけど、みんなはどんな格好で来るのだろうか。

考えることは山ほどあり、1時間はすぐに経った。
約束の5分前に駅に戻ると、ミヤモトが1人でスマホをいじって待っていた。

「おつかれー!」

こちらに気づいたミヤモトに声を掛けられ、店まで案内してもらった。
聞くと、ミヤモトも誘われた立場だという。
ミヤモトが呼んだのは俺だけなのか…? もっと呼んでいるような印象だったけど…。

店には100人ほどの同年代の男女が溢れていた。
九州会よりも多いと思われる。
戸惑う間にミヤモトに適当な席に座らされ、幹事らしき男の音頭で飲み会が始まった。
一体、なんだこれ?

西山 一(はじめ)

西山 一(はじめ)サラリーマン小説家

投稿者プロフィール

シェアブログに乗り込んできた新進気鋭の小説家。
独特のタッチと切り口でファンを魅了している。

実際に本人に起こった日常の出来事を小説タッチで表現する。
そのシュールさにハマる人が続出中。

2016年、不動産投資デビュー。
今後は、多摩と埼玉の物件を買い進める予定。

30代。生まれも育ちも多摩。多摩を知り尽くした男。
立川を都会だと信じて疑わない。

ブログ「今日もまた終わる。」運営中。

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